2025年3月1日、MAXチャンプシリーズが鈴鹿サーキット南コースでいよいよ開幕した。
2024年に発足した同シリーズからレースオーガナイザーとレースフォーマットが一新され、新生MAXチャンプとも呼べる注目の大会に3クラス合計105台ものエントリーが集まった。MAXチャンプシリーズを含むRotax MAX Challenge (RMC)鈴鹿シリーズ全体としては192台のエントリーを集め、国内最大規模のカートレースが誕生することとなった。
レースウィークは土日に各1レースの2レース制で行われ、予選形式は瑞浪サーキットと同様の総当たり形式を採用。よりコンペティティブかつ多くのヒートを走れることを主眼にしている。
また鈴鹿サーキットを貸し切って独立開催のイベントにしたことでライセンス要件が緩和され、海外からのエントリーも促進が図られた。2025年のまだ開幕ラウンドの段階だが、既にMAXチャンプ3クラスの約2割が海外からのエントリーとなり、早くもその効果が表れた。
鈴鹿サーキット南コースには本年もROTAX日米アンバサダーを務める笹原右京に加え、今年からドライビングコーチに任命された佐藤蓮と野村勇斗も姿を見せた。野村は練習走行日に現役ドライバーたちとともにシニアMAXで走行。走行後はドライバーからの質問に答えるなど、コーチの役割を果たした。
また今回のレースウィークにはホンダレーシング、ホンダレーシングスクールからの視察も入り、MAXチャンプの注目度の高さも窺えた。
24台が出走したQualifying Practiceでトップタイムを記録したのはろいど海翔。2番手に刈米敦哉、3番手には昨年の同シリーズで優勝経験のある藤原迪永が続いた。
予選第1ヒートは藤原が2つポジションを上げトップチェッカー。第1ヒートのベストタイム順で予選順位の決まる第2ヒートでは、4番手からスタートしたろいど海翔が1位でチェッカーを受けた。
この2回の予選ヒートのポイントにより、決勝はろいど海翔がポールポジションを獲得。2番グリッドに藤原、3番グリッドには昨年のRMC総合チャンピオンのHan Johnが並んだ。
ろいど海翔
藤原迪永
Han John
決勝スターティンググリッド
決勝は1周目にHan Johnがトップを奪うと、そのまま序盤をリード。5番手スタートの細川瑛斗とポールスタートのろいどがHanを追った。中盤にはトップ争いに藤原、安藤海翔、加納康裕が加わり、5台による激しいトップ争いが繰り広げられた。
その均衡をろいどが破りトップに立つと、一気に約1秒のマージンを築くことに成功。そのまま逃げ切り、ろいどがMAXチャンプ初優勝を飾った。ファイナルラップの最終コーナーまでもつれた2位争いはHanに軍配が上がり、安藤が3位となった。
ミニMAX ラウンド 1 表彰式
前年の開幕戦の倍以上となるエントリーを集めたジュニアMAXは、40台がQualifying Practiceに出走。第1組では優勝経験のある楠本心真がトップタイム。2番手に横山輝翔、3番手に吉田侍玄とジュニアで経験を積んできたドライバーが上位を占めた。一方第2組ではジュニアではルーキーの柴崎尊がトップタイムを記録、2番手もアメリカから参戦してきたJaxon Porterが入り、ジュニアクラスと鈴鹿で経験の少ないドライバーが上位を占めることとなった。
ABCと3グループに分けられ総当たり形式で進行する予選ヒートは、波乱の連続となった。B-Cヒートではセカンドスタートの横山が失格。A-Cヒートでは注目のPorterがファイナルラップに後方から接触されリタイヤ。Porterは続くA-Bヒートでも接触を受けリタイアに終わり、痛恨の予選落ちとなってしまった。
総当たりの予選ヒートの結果、決勝のポールは楠本、2番手に柴崎、3番手吉田、4番手飯田一仁が決勝スターティンググリッドの上位に並ぶこととなった。
楠本心真
横山輝翔
柴崎尊
Jaxon Porter
決勝はポールの楠本が順当にリード、吉田と柴崎がトップを追う序盤戦となった。さらにトップ争いに坂野太絃も加わると目まぐるしく順位が変動する展開に。レース終盤に至ると決勝23番グリッドからスタートした横山が驚異的なペースで追い上げ、なんとトップ争いにまで絡む位置に浮上してきた。横山はチェッカーまで3周を残してトップに立つと、2位を大きく引き離して優勝を果たした。2位には吉田、3位には今村昴星が入り表彰台の一角を占めた。
決勝スターティンググリッド
吉田侍玄
横山輝翔
ジュニアMAX ラウンド 1 表彰式
39台が出走したシニアのQualifying Practice。第1組のトップタイムは松井海翔、2番手に井上瑞基、3番手に昨年のシニアチャンピオンQuinten Luが続く。第2組は欧州での経験が豊富な遠藤新太がトップ。2番手に昨年のジュニアチャンピオン澤田龍征、3番手には同じくジュニアからステップアップした徳岡大凱が続いた。
総当たりの予選ヒートではQuintenが若干ペースに苦しみながらもトップ通過。2番手松井、3番手澤田、4番手井上という上位のスターティンググリッドとなった。
Quinten Lu
松井海翔
澤田龍征
決勝スターティンググリッド
迎えた決勝、オープニングラップを終えトップで戻ってきたのは5番手スタートの塩田惣一朗だった。2番手にQuinten、3番手に澤田というオーダーでトップ争いは早くもヒートアップ。2コーナーで塩田とQuintenが接触すると、その間隙を縫って澤田がトップに浮上した。しかしその後2コーナーで今度はQuintenと澤田のラインが交錯、澤田はそのままリタイヤとなりQuintenも大きく後退してしまう。
レース中盤には再び塩田がトップを奪うも、11番手スタートから浮上してきた手塚大雅と激しくバトルする展開となった。終盤にはその攻防の一瞬の隙を見逃さず遠藤がトップに浮上、そのまま逃げ切って開幕戦のウィナーとなった。2位には気迫の走りを見せた塩田、3位には12番手スタートから順位を上げてきた徳岡大凱が入った。
ローリングスタート
塩田惣一朗(左)とQuinten Lu(右)の攻防
終盤トップに立つ遠藤新太
シニアMAX ラウンド 1 表彰式
快晴の土曜日から一転、日曜日に開催されたラウンド2は朝から時折雨の降る不安定な天候となった。
24台によるミニMAXのQualifying Practiceはドライコンディションとなり、加納康裕がトップタイムをマーク。2番手に韓国から参戦のYoon Issac、3番手に安藤海翔が続いた。前日のラウンド1で優勝したろいど海翔はマシンの不調から20番手と、大きく出遅れることとなった。
予選ヒートではHan JohnがQualifying Practice10番手から大きく巻き返しトップ通過。2位に北村紳、3位に安藤と続き、4位にはろいどがQualifying Practice20番手から挽回してきた。
加納康裕
Yoon Issac
安藤海翔
Han John
北村紳
ろいど海翔
決勝レースではポールスタートのHanが序盤をリード。安藤、北村、ろいどまでがトップ4を形成、その中でペースに勝るのはろいどだった。しかし前日のように逃げ切る展開には持ち込めず、レース最終盤までトップ4による熾烈なトップ争いが続いた。そして最終ラップまで続いたバトルを制したのはろいど。ミニMAXで驚きの2連勝を成し遂げてみせた。2位には安藤、3位にはHan、4位には着実にポジションを上げてきたHan Yu Chenが入った。
決勝終盤のトップ争い
ミニMAX ラウンド 2 表彰式
40台が出走したジュニアMAXラウンド2のQualifying Practice。第1組のトップタイムはラウンド1から速さを見せていた楠本心真。2番手に今村昴星、3番手にはラウンド1で不運な展開に巻き込まれたJaxon Porterが続いた。第2組は引き続き好調な横山輝翔、2番手に北中一季、3番手には柴崎尊という上位陣となった。
楠本心真
今村昴星
横山輝翔
北中一季
総当たりの予選ヒートでは、2ヒートともトップチェッカーを受けた横山が総合1位で予選通過。楠本も手堅くまとめて総合2位、3位には着実にポジションを上げた坂野太絃、ジュニアルーキーの柴崎尊は大健闘の予選総合4位につけてみせた。
坂野太絃
柴崎尊
迎えたジュニアMAXラウンド2の決勝、ドライで全車フォーメーションラップに出た直後突然の降雨で赤旗中断。スターティンググリッド上でのタイヤ交換作業が認められたが、結果としてはほとんどの車両がドライタイヤを選択して再度スタート進行が行われた。
仕切り直しとなった決勝のスタート、ホールショットを決めてポールスタートの横山が序盤をリード。ぴったりと背後につける2番手坂野、3番手楠本、4番手柴崎までがトップ集団を形成していった。
このこう着状態はファイナルラップまで続き、下り25Rで坂野が横山に仕掛けることでついに均衡が破られた。最終コーナーまでトップ集団がもつれる展開となったが、最後は坂野が抑えきり見事優勝。2位には最終ラップの攻防をくぐり抜けた森谷永翔、3位に楠本という着順となった。
決勝スターティンググリッド
フォーメーションラップ
最終ラップ最終コーナーからの立ち上がり
ジュニアMAX ラウンド 2 表彰式
シニアのQualifying Practice、第1組でトップタイムを記録したのは前日のラウンド1でリタイヤに終わった澤田龍征。2番手には伏兵、古来琢磨がつけた。第2組では好調を維持する徳岡大凱がトップ。僅差の2位には手塚大雅がつけた。
澤田龍征
古来琢磨
徳岡大凱
手塚大雅
予選ヒートではQualifying Practiceでやや出遅れた塩田惣一朗が2ヒートともトップで終え、予選総合で首位に立った。徳岡も2ヒートを無難にまとめ予選総合2位、3位にはQualifying Practiceで総合12位に沈んでいたQuinten Luが浮上してきた。
塩田惣一朗
Quinten Lu
決勝のスタートは塩田が好スタートを決めトップを堅守。2番手には1ポジション上げたQuintenがつけ、3番手に徳岡が続いた。そしてレース中盤にさしかかる10周目にQuintenが満を持して塩田を攻略、トップに浮上。しかし塩田も諦めずQuintenを追い、さらに6番手スタートの遠藤新太もトップ争いに加わり3台による攻防が続いた。レース終盤にはトップ争いに徳岡、津野熊凌大、門田翔成、遠藤照剛も加わって大混戦の様相となった。
Quintenは頭脳的な展開でリードを守り切り、トップチェッカーを受けた。2位には徳岡、3位に遠藤新太が入り、徳岡と遠藤はラウンド1から連続の表彰台獲得となった。
トップ集団をリードする塩田惣一朗
終盤トップに立つQuinten Lu
シニアMAX ラウンド 2 表彰式
レースオーガナイザーとレースフォーマットを一新したMAXチャンプは、参加台数の大幅な増加とよりコンペティティブなレースを作り出し、これまでにない盛り上がりを見せてシーズンを開幕させた。
レースウィークを通じ、MAXチャンプへの注目がさらに高まることとなった。